みどりうさぎの子守詩 (片井 絽々)
今の自分がある場所に
佇む小さな幸せ
当たり前だと思ったら
見つけられない
何気ない日々の傍らで
寄り添う幸せ
気付かなければ
消えてしまう
・
心に選択された
幸せの記憶は
身体が消滅しても
在り続けるのでしょう。
永遠の時空に
再びの偶然を装い
宇宙の中で
再び寄り添うのでしょう。
幾千の命を超え
もう一度
あなたに 廻り逢いたい
もう一度
あなたと 巡り逢いたい
・
人は往ってしまった後も
誰かが思い出してくれる間は
生きているのですね。
誰もが忘れてしまう
その時が本当に往ってしまう
時なのでしょうね。
貴方の笑顔を
いつも私は思い出すから
今も 一緒にここで居るのですね。
・
・
すべての優しいもの達は
百年変わらず傍にあるのに
鳥かごの中に居るのは私の心
君が見つけた青い鳥
君の優しさも
君の声も
君の言葉も
君の手も
君の愛も
君への愛も
まわりの大切なもの達は
百年変わらず共にあるのに
かごの中で迷っていたのは私の心
今こそが 飛び立つ時よ 青い鳥
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降り積もる雪の重さを 知る枝は・・・
冷たく悲しきものを とまらせた葉は・・・
ま白き儚さを 抱きしめた蕾は・・・
春遠きにも迷わず凛と咲いた
楚々たる淡色の花と咲いた
かほる花の如く 人を咲きたい
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今まで常識だったことが
非常識に変わる
非常識とされていたことが
常識と認識される
正解は時代背景の中で
推測と編集を繰り返しながら移ろう
基準を持たない刹那の法則
信じるのは自分の心に委ねた許可
・
・
少しずつ
今を忘れる父さんだけど
まだ現実が分かるから
忘れる自分が分かるから
閉ざれてゆく 孤独と向き合い
歯痒い苦しみ母にぶつける
それが 病気と知っていても
情けないと 母が泣く
大好きな 大好きな父さんが
一度に全てを忘れたら
あなたの苦悩は消えてくれますか?
みんなの悲しみは消えてくれますか?
大好きな 大好きな父さんが
こんなに愛した娘のことさえ
忘れる日が来てしまったら
あなたを私が抱き締めて
母親のように唄いましょう
同じ歌ばかりを
何度でも 何度でも・・・
ひねもす あなたの側に寄り添い
昔の話を聞きましょう
同じ話ばかりを
繰り返して 繰り返して・・・
大好きな 大好きな父さんが
一度に全てを忘れたら
あなたの苦しみは消えるのですか?
みんなの悲しみは消えるのですか?
・
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真っ赤な靴を買いました。
この歳で
履ける筈もない赤い靴
幼い頃のお気に入りでした。
魔法みたく
空まで飛べそうな赤い靴
悲しい歌を聞いた日から
けっして
履かなくなった赤い靴
今頃なぜだか
あの頃の魔法に逢いたくて
真っ赤な靴を買いました。
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意識的なことって
ステキだし カッコいいのだけど
心が動かないのです。
無意識なことって
気づかないまま 心に染みてきて
人は人を受け入れるのですね。
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好きというのは
純粋無垢に
心の中から放つ想いか?
愛するとは
総てを許せて
心の中へ受け入れた想いか?
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今日まで生きた日々を
想い出と呼ぶには
多くなり過ぎました。
幸せ達を残して
それを過去と呼ぶには
短かすぎる気がします。
今日までの日々に
名前を付けるのならば
「出逢い」と書いて
心の箱に入れて置きましょうか。
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何かと出会い
誰かと出逢い
気づきがあって
心と出逢う
命と出会い
時と出逢い
自分と出会って
心を知る
切なさも愛しさも
儚さも喜びも
生きることは
学ぶこと
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多くの出会いは
多くの喜びと
多くの悲しみが
一緒にやって来る
深い行き合いには
深い友情物語と
深い切なさが
遠慮がちにやって来る
どちらにしても
人は独りぼっちだし
心は自分勝手だし
満足なんて無いのだろうか
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有るものの数と
無いものの数は
同じなのかも知れません。
誰かに有るものが
自分には無いと思っても
悲しい数と
幸せの数が同じなら
みんな
同じだけの
切なさを抱えながら
笑っているのですね。
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「夢迷い人」
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夢の中の迷い人
うつ向いたままで
立ちすくむ
振り返るなど
しなくて良いのに
翼を閉じて見てしまう
背伸びしてまで
見なくて良いのに
未来こわごわ覗き込む
夢の続きはどうでした?
幸せだったら行きなさい。
悲しき物語なら目覚めなさい。
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・
・
星も月も太陽も
いつだって
どんな時だって一緒だよ
ふたりでも 淋しい時は淋しいけど
ふたりでも 辛い時は辛いけど
どうせ淋しいのなら
大好きな君と一緒がいい
どうせ辛いのなら
大好きな人と一緒がいい
・
・
涙ひとつぶ 落としたような
五弦の琵琶の泣き音は
哀しみ呼んで来て泣かす
ひとつ弦ひき 我が子の声
ふたつ弦ひき 父親の顔
みっつ弦ひき 母の姿
よっつ弦ひき 君のこと
いつつ弦ひき 我が心
悲しい音しか 唄えずに
寂しい色しか 奏でずに
涙ひとつぶ 落としたような
五弦の琵琶の泣き音は
遠い昔を偲びて泣かせる
穏やかなる音 聞かせておくれ
嬉しき色を 奏でておくれ
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