8月12日・・・1話 鎮魂歌 1

本日12日から17日まで・・・留守を致します。
その間に、何日かに分けていくつかの物話を書かせて頂きました。
宜しければお読みください。
まず、ワンコのお好きな方には少し寂しいお話かもしれませんが・・・

鎮魂歌 1

息子の結婚が決まった年の夏・・・我が家に新しい家族が加わりました。
命名「武蔵」ムサシ・・・ロットワイラーという生後数ヶ月の男の子でした。
ビロードのような真っ黒い短毛に、断尾され手足の指は大きく既に大型犬の風格でした。

軍用犬とか警察犬として活躍したり、セラピー犬としても活躍している種類です。
性格は物静かで優しく、献身的と書かれていました。
働く犬たちは忠実な性格はもちろんですが・・・彼等の中の僅かですが、
不思議な力を持っている子達がいるそうです。
例えば麻痺のある人に寄り添う時、右手に麻痺のある人には、自らの身体を敢えて
右側に横たえるのだそうです。
この行為は決して教えられて出来るものでも無く、限られた子達だけが持つ能力らしいですが・・・。
ムサシは、それに近い不思議な何かを持っていたような気がします。
あの子がいた2年半・・・痛い目 、辛い目と入退院の繰り返しだった 私の身体の異変を
誰よりも先に あの子は気付いていたようでした。

ムサシの一番は、態度のでかい?オニイチャン!二番がオトウサン!
ムサシは、私を まるで自分の子供のように扱い、私にだけは逆らうこともありました。
しかし、怖い程に轟く雷の時、ムサシは体を丸くし私を抱きかかえるようにして、
傍を離れませんでした・・・何度も何度も私を見上げては大丈夫だよと言うかのように顔をなめ・・・
ある日、山間のお墓参りに行った夕昏・・・待て!と命令されたら一日でも待っている子が、
自分の視野から私が見えなくなった途端に立ち上がって来て、私の右手を咥えて振り回し、
ヒドク文句を言ったのです。
それは・・・、こんな所で勝手に離れてはダメ!と、叱られているようでした。

どの子でもそうですが、毎朝必ずペロペロとご挨拶・・・
ところが、ある朝突然 ムサシは私に、その「大好き」をしてくれないのです。
「あら?ムサシくん、オカアサンに大好きは?」って言うと、じっと顔を見たと思ったら、
オトウサンに何やらブーブー文句を言いいに走って行きました。
その訳は、昨日オトウサンがムサシに、私が手術を受けた後だし、大好きをしてはいけないと
言っておいたのだそうです。
その頃から・・・ムサシはこれまで以上に、私に甘えるようになるのが気になっていました。

2011年 8月 12日掲載
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