8月15日・・・ばあちゃんの話 2

お漬物とばあちゃん

ばあちゃんは、少し不思議な所がありました。
不思議?な私が、他の人を不思議な人って言うのも可笑しいのですが…

私は、結婚してから寝込む事も多くなり良く入院をするようになりました。
毎年のように風邪をこじらせたり重症の胃潰瘍ができたり、愛大にも入院したりと。
きっと友達も居ない慣れない古風な土地柄でのストレスもあったと思います。
その上に選挙、家業、母の看病、主婦業・・・そんな私を見守ってくれたのが、ばあちゃんでした。
選挙ともなると心も身体もクタクタですし、人の言葉にはとても過敏になってしまうものです。
へこんでいる私に「おまえのことを悪く言う人がいたら、ばあちゃんが許しゃせん!」って言ってくれました。
その言葉に、どれだけ救われ頑張れていたか知れません。

ある日の午後でした…私は この数日、高熱を出して二階の寝室で寝ていました。
すると 階段から誰かが上がって来る 気配がするのですが、様子がおかしい・・・。
なんと すっかり年をとった足で、ばぁちゃんが階段の途中でうろたえていました。
多分、階下から何度も呼んでいたのでしょうが、インターホンを通さないと 二階までは聞こえません。
無理なはずです。 両手に煮物と白菜のお漬物を持ったままで上がってくるなんて・・・

「おまえが寝ていると、ムサシが教えてくれたんよ~。」と、ばあちゃんは真顔で話すのです。
ムサシとは我が家の愛犬で、50kgもある真っ黒い ロットワイラーでした。
大人しくて忠実な本当に賢い子でしたが、見た目が恐そうなので平気で触る人は少ないようでした。
しかし、ばあちゃんだけは不思議と平気でムサシと遊んでいました。
多分、ムサシと色んなことを二人は話していたのかもしれませんね。

そんなばあちゃんは、お漬物を漬けるのがとても上手で近所でも評判でした。
私は、当たり前のように美味しい白菜や高菜のお漬物をもらって戴いていました。
ある時、梅干しのシソを揉み真っ赤に染まった手で、言うのです。
「ほれ、ばあちゃんの手は魔法の手やから シソの色も真っ赤でキレイだろ~!」
「ばあちゃんの漬物は、この魔法の手で毎日揉むから美味しくなるんよ~!」って、
淋しい時にもこんな風に生まれ故郷の新居浜言葉で笑わせるのです。

優しくて不思議なばあちゃんの話は、本当だったとか冗談だったとかどちらでも良かったのです。
ただ、もっともっと長生きして・・・私の側に居て欲しかったと今も思うのです。

2011年 8月 15日掲載
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