8月16日・・・ばあちゃんの話 3

ばあちゃんとクロ

人の心とは、想いとは本当に不思議なものだと思います。
大好きだった ばあちゃんは、今も私が辛くてたまらない時 傍に来てくれる気がします。

お向かいの ばあちゃんは、幼い頃から奉公に出され苦労ばかりだったそうです。
人生の幕引きは意識不明のまま誰の手も煩わさずに、わずか数日で天国に往ってしまいました。
天国には、先に往った娘さんと、じいちゃんが待っていたはずです。

長い間 独り暮らしのばあちゃんと、いつも一緒だったのはネコの「クロ」でした。
クロは足先以外、体中全部がホントに真っ黒であまり大きくない年老いたネコでした。
しかしクロは私のことが大嫌いでした。
ばあちゃんと仲良しの私が気にいらなかったようで、時々とんでもない行動に出るのです。
ばあちゃんが立ち上がって見えなくなった瞬間、クロは途端に凶暴になり 私をひっかくのです。
ふたりの仲に入ってくるな!って言わんばかりで、まさしくそれはクロのジェラシーでした。
眠る時にも、クロは ばあちゃんのベッドで一緒でした。

ばあちゃんは毎日、私の車が駐車場に入るを聞くと安心して早目にベッドで休んでいました。
道路を挟んで お向かいの家が ばあちゃんの家で、隣接して車庫がありました。
私の車の音で「昨日は、仕事が遅かったんかい?」って、気にかけてくれていました。

ばあちゃんが往った後も、暫くはお家の人にお願いして誰も居ない家でしたが、
ばあちゃんの寝ていた部屋だけには、電球の灯りを 点してもらっていました。

さて・・・クロは、ばあちゃんが往ってからというもの 理解したかのように
殆どの時間を、私の家の周りで過ごすようになりました。
あれだけ キライだったはずの私にも、まさに ネコ撫で声で擦り寄って来ました。

そして、不思議なことが 同時に始まりました。
クロは 毎日毎日・・・私が帰ってくるのを必ず車庫で待っていてくれるのです。
私が車から降りると「ミャ~」と鳴いて・・・それは「帰ったのかい?」って、ばあちゃんのようでした。

寒さ厳しい日が落ちた夕刻も、毎晩クロは 私を待ってくれていました。
駐車場から一緒に私の家の玄関まで見送ってくれると、身を反して自分の家へ帰ってゆきます。
クロは、ばあちゃんが漬物樽を並べていた物置に、家を構えたのでそこで眠るのですが・・・
このあと、もう一度私がお風呂に入り始めると必ずお風呂場のサッシの所にやって来ます。

それは、ばあちゃんが往ってからというもの・・・
私は寂しくて、だれの目にも触れないお風呂で良く泣いていました。
ある日「もう、泣くな・・・」って、ばあちゃんに言われたような気がしたのです。
その頃から、クロは必ず私がお風呂に入って出るまでの間サッシの所で待つようになったのです。

やがて、クロも私たちが旅行に行って留守の間にそ~っと、ばあちゃんの所に往ったようです。
ちょうど ホテルの部屋から黒い猫が歩くのを私達は見つけクロの話をしていました。
思えば、ばあちゃんもクロも不思議な繋がりで 不思議なことが沢山ありました。
そう 初盆にはご近所の人がお参りをするのですが、仏壇の写真に「ばあちゃん」と声をかけたら
カタン!って音がしたのは、返事をしてくれたのだと思います。

今日まで3話、ばあちゃんの話を書ました。
たくさんの思い出の中で、優しさに包まれていた3日間だった気がします。

2011年 8月 16日掲載
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