月の森の少女/2013/8/6

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[ 月の森の少女 ] … みどりうさぎの小さな物語より…
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西の空を見てごらん・・・綺麗な月だね。
弓のような今夜の月を 上弦の月っていうのだよ。
ほら、三日月の近くに並んでいるみっつの星が見えるかい?
みっつの星の真ん中に小さな星があるだろう。
そう、お月さまと同じ色をした星・・・。
今夜は、あのお星さまの お話しをしてあげよう。

昔 ある森の中に、小さな女の子がひとりぼっちで住んでいたんだよ。
その小さな女の子は、いつも泣いてばかりだった。
毎晩、毎晩、月明かりが照らしてくれるのだけをひとり待っていたのさ。
お月さまの光が森を仄かに包み始めると、
女の子は木々の間を追いかけて夜明けまで星空を見上げて過ごしたのです。

ある夜のこと、空から夜ごと女の子見ていたお月さまがに悲しそうな声で言いました。
「空を飛べる靴をあげようか?」
女の子は、うれしそうな笑顔をすると迷わずに答えました。
「はい!私に空を飛べる靴をください。」

そして・・・月の雫が森の小枝に、ふた粒落ちて来ました。
その月の雫は、たちまち黄色い小さな靴になりました。
その黄色い靴は、女の子の小さな足にぴったり合ったのです。
しばらくスキップをしてみたり、そっと枯れ葉を踏みしめてみたり。
そして、お気に入りのドレスに着替えた女の子はスカートの裾を広げて何度も何度もクルクルと回りました。
それはそれは楽しそうに・・・

月明かりが女の子の足元を照らした時、そのまま小さな手で月の光につかまったのです。
黄色い月色の靴は、軽々と女の子の体を空へと運んで行きました。

そう・・・ひとりぼっちで泣いてばかりいた女の子は、お星さまになったんだよ。
空には、随分前にお星さまになってしまったお父さんもお母さんもいたんだ。
星になった女の子は、もう淋しくなくなったのだろうか・・・。
それからはこうして、ずっとみっつの星が お月さまの近くで何百年でも光っているのさ。

けれどもね・・・空を飛べる靴を履いてしまうと、もう二度と地球には戻っては来れないんだよ。
だから辛い事があっても、泣いてばかりいないで頑張らないといけないのさ。

2013年 8月 06日掲載
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