みどりうさぎの子守詩 (片井 絽々)


「砂時計」

切なさが流れる

六十兆個の心の粒が
六十兆個の夕暮れの中で

六十兆個の風に吹かれ
六十兆個のかすかな音で

ひとり ひとりの悲しみは
ひとつ ひとつの星粒となる

砂に溶けた悲しみは
煌めく約束の分子を閉じ込め
もういちど心の粒となる

喜びが流れる

六十兆個の命の粒が
六十兆個の夜明けの中で

六十兆個のかすかな音と
六十兆個の風に吹かれて

ひとり ひとり輝ける砂の粒
ひとつ ひとつの時を刻む

夢幻の心の定位置へ
流星となりて流れゆく
それは まるで砂時計だった 

2011年 4月 28日 掲載


「 夢 」

人の心は夢をみる
夢みた所が未来なんだよ
夢みた所まで飛べるんだよ

2011年 4月 26日 掲載


「輝く人」

輝くと言うことは
心に小さな傷を
刻みつける事なのかも知れない

それは 矢刷りをかける爪のようで
それは 宝石になる原石のようで

磨かれて 磨かれて
小さな傷を 重ね重ねて輝く

輝いている人ほど
心の傷を 重ねて刻みつけて
生きてきたのだろう

凛と生きている あの人も
辛いと言わない あの人も

2011年 4月 22日 掲載


「春うらら 」  

大和の国に 桜舞う
はらり ひらり 花の舞い   

空を染めて もも色 花色
風と戯れ 春らんまん
小指に止まって紅となる

大和の国は 菜の花畑
夜空 黄色き 月のしずく

花たち染めて 蝶になる   
光りに誘われ 春うらら       

幼子の髪に揺れて
花簪となる

桜 らんまん 春うらら
菜の花 爛漫 春うらら
春色らんまん 春うらら

2011年 4月 20日 掲載


「 風 」

迷いながら
戸惑いながら
季節外れの 風鈴の音

誰かを呼んでいるの?
寂しいのですか。

誰かを探しているの?
見えないのですか。

誰かに逢いたいの?
泣いているのですか。

誰かを待っているの?
心が遠いのですか。

私が届けてあげましょうか?

2011年 4月 18日 掲載


「 いつのまにか 」

風景は
この目で見ていると
疑わなかった

春に山笑う さくら色
夏に木々深く みどり色
秋に舞い散る あかね色
冬を覆う 白き色

時の流れは
この耳が聞いていると
錯覚していた

春に開く 花の音
夏の星座 煌めく音
秋に羽を擦る 虫の音
冬に凍えて 月の音

心に届く 景色だった
心で聞いた 音だった
気付かぬままに
季節が過ぎた

2011年 4月 16日 掲載


「宿題」

どれ程の苦しみに出会おうと
どれ程の痛みに泣こうとも

自分に耐えられぬ程の宿題は無く
自分に終われない程の宿題は無く

それが人それぞれの
切なさなのだと 誰かが言った

2011年 4月 14日 掲載


「赤き糸 」

この左手のくすり指
きつく巻かれし 赤き糸

この身の涙 滲みし色よ
手繰る程に 濃く染めし

この左手の くすり指
きつく絡みし 定め糸

この身放てる 術も無く
逃げる毎に 引き止められて

この左手の 赤き糸
永遠に絡めた 運命糸

霞の空に舞う 桜花
はらはら散る刻 淡き花
川面に流れ 運命花

とどまり
追い付き 
寄り添いし

この左手のくすり指
互いの命 繋げて流れる

永遠に契りし赤き糸
君と絡めし運命糸

2011年 4月 12日 掲載


「笑顔の作り方」

かなしい歌しか唄えない私に
小さな子供が教えてくれました。
「ほら、こんなふうな
お顔にするとかわいいよ」

うつむいてばかりの私に
老いた人が教えてくれました。
「いまのうちに 空をみて
おかないともったいないよ」

そうですよね・・・
本当に そうですよね・・・

2011年 4月 10日 掲載


「空」

全ての命は 天空で生まれた
全てのモノは 空から降りてきた

身体は どこまでも外側へと繋がって
心は どこまでも内側で繋がっていく

だから 空を見上げると
こんなに懐かしく思えるのですね。

だから 空を見上げると
こんなにも穏やかな気持になれるのですね。

2011年 4月 08日 掲載


「 時 」 

時を刻む音は
ひとりひとりの鼓動だった

身体ごとに違う早さで
ひとりひとり違う音がした

時は宇宙との約束ごとで
ひとりひとりの記憶だった

急ぐことなんかない
あなたらしく過ぎれば良い

焦ることなんかない
あなたの記憶で進めば良い

2011年 4月 06日 掲載



「心巡り」

春は来ますか?
緑色を無くした大地にも・・・

蝶は飛びますか?
花の咲かない野辺山にも・・・

そう、春は必ず訪れます。
季節は必ず巡ります。

永遠なる天空に
長さと深さは区切りなく

僅か30000日の人の日々まで
すべてを把握し巡ります。

きっともうすぐ花が咲き
花が咲けば蝶が舞う

心に巡る春の頃
春へと辿る人の心

2011年 4月 04日 掲載


「神聖な場所」

見えないモノの無限
触れないモノの偉大さ
聞こえないモノの神秘

神聖な景色の中で
遠い記憶を思い出している
バーチャルな世界で失った何かを
再生しているようだった

忘れていた深い呼吸が甦る
全ての細胞が一斉に分裂を始めた
身体の真ん中でドクン!と
魂が2回跳ねた

生きているではなく
生かされていることを 思い出した

2011年 4月 02日 掲載


「やさしさ」

優しさの
隣には

悲しみの心と
強い心が
ありました。

2011年 4月 01日 掲載


「いのち」

この星で
この父とこの母の子として
生まれ来た命よ

1/2億5千万の奇跡の意味を
どれだけ解って生きていたのだろうか?

2011年 3月 28日 掲載


「花色心」

幼き日
花弁集め 色絞り
水の花色
同じ色に心染まり

老いて再び
花摘みて
同じ色に心染まれと
願ってみても・・・

願ってみても・・・

2011年 3月 26日 掲載

 

「星の協奏曲」

星が奏でる協奏曲
音も無く
言葉も無いまま
ただ 滲みわたり
ゆらぎユラリ揺らぐだけ

瞼を閉じても届く調べ
音も無く
言葉も無く
ただ 心へと
きらりキラキラ煌くだけ

遥かな過去に記憶した
遠い原子の思い出よ
星が奏でる協奏曲
愛しく優しく漂い続ける

ゆれて揺らぎ・・・
きらきら煌き・・・

2011年 3月 25日 掲載


「親子」

心配性なところも
この低い鼻も
取り越し苦労ばかりするのも
胃腸の弱いところまで そっくりで

おまけにこの頃
後ろ姿まで似て来たって

良いところなんて
ひとつも無い
けれども親子だから
仕方がない

でも・・・
父さんに似ていて良かったと思う
そう・・・
母さんに似ていて良かったと思う

2011年 3月 23日 掲載

 

「手紙」

おばあちゃん・・・
あの子が先に
そちらへ往きました。

私が替わって
あげたかったけれども
仕方なかったのです。

迷わぬように
寂しくないように
どうか宜しくお願いします。

また逢えるから
それまで待っていてと
あの子に言い聞かせて下さい。
 
                   母より

2011年 3月 22日 掲載


「祈り星」

夜空にさんざめく
星たちは
遠き過去より
命を紡ぎ
遥か未来へと
想い繋ぐ

静寂に揺らぐ
星の瞬き
命生まれて
一筋に飛ぶ
地球という名の
祈りの地へと

夜明けに消えて西の空
星は帰りて
命 消えても
再び戻りまた巡り
命となって必ず逢える

再び巡り命となって
必ず出会い 必ず逢える

2011年 3月 21日 掲載