みどりうさぎの子守詩 (片井 絽々)


ねむの木

現世に生きる道すがら
夢を見る
夢を見る

刹那の悪夢と
また 歩き出す

未来を眺める時空間で
夢を見る
夢を見る

碧き星は
神々しく輝いていた

まどろみの中で目を開けると
若き日の 母の胸に
抱かれていた

その背景には 大きな大きな 
ねむの木が
綿毛のような花を咲かせる

天空を染めるほどに
優しく静かな 花色だった

穏やかな 揺らぎに包まれて
夢を見る
夢を見る

2011年 3月 19日 掲載


「人の心」

傷ついた細胞は自ら消えます。
傷ついた遺伝子を抱え消え去ります。

傷ついた心は・・・
傷ついた心は・・・

自分の心で消せるのですか?
時が抱え連れ去るのですか?

傷ついた心は・・・
傷ついた心は・・・

人の心でしか消し去れません。
人の想いに溶かさられ和らぎます。
人の優しさを知り忘れるのです。

傷ついたのは人の心・・・
傷を癒したのも人の心・・・

2011年 3月 18日 掲載


「月の花 」

母の庭に月が咲く
黄金色の月の花

私は何処ではぐれたの?
私は誰からはぐれたの?

母の庭に花が咲く
黄金色に香り立つ

私は何処へ行きたいの?
私は誰を探しているの?

母の庭が香り立つ
黄金色の金木犀

私は何処へ帰りたいの?
私は誰に逢いたいの?

私の未来を訪ねてきたの
私の未来も此処からでした

私は何を捜していたの?
私は何に逢いたかったの?

私は貴方に逢いたかった
私は貴方の所に帰りたかった

2011年 3月 17日 掲載


「森の子守唄」

星が揺れているの?
私が揺れているの?

月が泣いているの?
私が泣いているの?

森が唄っているの?
あなたが唄っているの?

愛しいものに逢いたくて
優しいこころへ
優しいこころへと

穏やかなものに逢いたくて
静かなこころへ
静かなこころへと

星が揺れているの?
私が揺れているの?

月が泣いているの?
私が泣いているの?

はじめて出逢ったはずなのですが
「どこかでお逢いしましたか?」

はじめて聞いた声が懐かしい子守唄のようで
「どこかで唄ってくださいましたか?」

森が唄っているの?
あなたが唄っているの?

こんなにも懐かしい子守唄
こんなにも優しい子守唄





「肌護り」

そっと忍ばせ身につけたこと

守られていると思う心が
この身を守ってくれること

自分に優しくできること
誰もに優しくできること

2011年 3月 16日 掲載

まほろば



穏やかな心 見失う時
澄んだ心 淀み漂う日

あてなく探す
かの まほろばよ
遥か遠き宙か古か?

すさむ思い 抱えきれず
切なき濃度 溶かしきれず

さ迷う心を 迎え誘うは
この まほろばよ
我が細胞の内の宙か?

総ての命と総ての祈り
そろりひそめて 源と知る




五弦の琵琶



涙 ひとつぶ 落としたような
五弦の琵琶の泣き音は
切ない今を想いて泣かせる

ひとつ弦ひき 我が子の声
ふたつ弦ひき 父親の顔
みっつ弦ひき 母の姿
よっつ弦ひき 君のこと
いつつ弦ひき 我が心

悲しい音しか 唄えずに
寂しい曲しか 奏でずに

涙 ひとつぶ 落としたような
五弦の琵琶の泣き音は
遠い昔を偲びて泣かせる
           
穏かなる音 聞かせておくれ
嬉しき曲を 奏でておくれ
           

2011年 3月 15日 掲載