みどりうさぎの子守詩 (片井 絽々)
遮光カーテンが
朝を拒絶する部屋
遠慮知らずのアラーム音を
手探りでスライドする
枕元の自分の心を
ペットボトルの生ぬるい水で
いっ気に呑み込んだ
リアリティーな今日が始まる
ひぃ ふぅ みぃ よぉ
いっむぅ なぁ やぁ
ばあちゃんの手が
夢を数えて 浮かばせる
いく度 落ちて来ようとも
この手の中へ降りておいで
ひぃ ふぅ みぃ よぉ
いっむぅ なぁ やぁ
ばあちゃんの声が
孫に唄うよ 紙ふうせん
ばあちゃんの手が
また祈っては 浮かばせる
ひぃ ふぅ みぃ よぉ
いっむぅ なぁ やぁ
ほぅら ほら ここのつ とぉ
歩くと言う字は
少し止まると書くのですね。
少し止まりなさいと
諭されているのでしょうか?
それとも・・・
止まるのは少しだよと
叱られているのでしょうか?
どちらにしても
歩けば出会う迷い道ですね。
あれほどまでに
染め上げた
これほどまでに
艶やかな
くれない夢幻の秋姿
あれほどまでに
舞い散るを
これほどまでに
哀れと愛でる
定めの中で人をする
寂しいのは誰も同じと
定めの中で夢をみる
追いかけるから遠いのだと
定めの中で恋をする
心は身体にひとつだけと
定めの中で生きている
だからこそ生きていると
鳥達は
風だけを受け取り
前へ前へと進む
木々達は
太陽だけを見て
空へ空へと伸びる
人々は
過去も未來までも憂い
時の中で立ち止まる
空を見上げて明日へ
風に促されながらも前へ
光に抱かれたなら夢へ
引き潮の後を追えず
小さな魚があわてます。
八時を告げる鳩時計は
間に合わずに泣きました。
私は大切な夢の後ろ姿を
見失いたくなくて走ります。
もしも言葉を持っていたなら
声を限りに叫びましょう。
丸くなった母の背中が淋しいのです。
小さくなった母の姿が悲しいのです。
幼い日 手をつなぎ歌った道
夕焼けの中 お家へ帰った道
ほんの僅かなこの坂道を
ため息に押されては足を出す。
私はたまらずに立ち止まります。
何故にもっと もっと早く
心添えられなかったのかと悔いる
母の傍で暮らせないことを悔やむ
丸くなった母の背中が淋しいのです。
小さくなった母の姿が悲しいのです。
負われて見ていた 故郷は
僅かの間に過ぎ去ってゆきました。
母が生きた年月を
追いかけるように私も生きています。
丸くなった母の背中が淋しいのです。
小さくなった母の姿が悲しいのです。
拙い私の詩ですが、素晴らしい曲を数曲作ってコンサートで歌って下さっています。
母の、この詩をこちらで書かせて頂きました。 先生宜しくです(ペコリ)
終止符
赤い星が
燃え尽きた時
無数の
新星を散りばめる
始まれば必ず
終るけれども
終止符は
出発の合図だった
影があるから
光を見るように
全ては
同時に存在するもの
憂いの中でも
必ずや
喜びや希望は
控えている
千年の孤独
千年の月 夏還し
想い余して
夕焼け空が沈む
千年の月 秋降らし
風がしみると
コオロギが啼く
千年の月 冬控えさせ
銀色の矢羽根を
星が射ち放つ
千年の月 気まぐれに
心 奪いて
人を叶わぬ恋に泣かせる
千年の月 千年の孤独
夜に吊るされ
何を眺めて何思うて
森の子守歌
星が揺れているの?
私が揺れているの?
月が泣いているの?
私が泣いているの?
愛しいものに逢いたくて
優しい心へ 優しい場所へ
穏やかなものに逢いたくて
静かな心へ静かな場所へ
森が唄っているの?
あなたが歌っているの?
こんなにも懐かしい声
こんなにも優しい唄
初めて出逢ったはずなのですが
どこかでお逢いしましたか?
初めて聞く声が遠い昔の子守唄のようで
どこかで歌ってくださいましたか?
星が揺れているの?
私が揺れているの?
月が泣いているの?
私が泣いているの?
森が唄っているの?
あなたが歌っているの?
木霊を聞いている
不安な心が耳をそばだてる
そんなこと
どうでも良いこと
どっちだって良いことよ
木霊になれずに消えてゆく
いくら待てども返らない
それはそう
音にはしないから
言葉にはできないから
声にして呼んでみれば?
自分の心を叫んでみれば?
そうだよね
けれども音にすると
木霊になってしまうから
「、」 の日
誕生日を迎えた朝
古びた人生に、読点を打つ
過去と未来の間で
わずかな隙間を取る日
私をくれた父と母へ
ありがとうを、告げる
切なさなんて知らなかった
あの頃を思い出す日
夢の続きを目指して
もう一度、飛び立てるように
人生の寂しかったことは
そっと許して忘れる日
ひと夏が揺れている
見えない程の風に促されて
暑く熱かった景色が
僅かに別な色を加えた
僕は知っている
夕刻と朝を幾度か重ねながら
ひっそりと夏が
思い出に変わって行くことを
誰もが夏に疲れた振りして
寂しさを隠すのだろうね
細やかなイオンの粒子を
細胞が吸い込む
間脳が共鳴を始めた
忙しい心に
幸せは来ないから
長い息で身体に招く